「ボードゲーム教室1098」誕生秘話

ボードゲーム教室は、子育てから生まれた?

学習塾の塾長がボードゲーム教室をはじめた理由

撮影時、娘は4歳、実は黒い玉をただ差し込んでいるだけでしたw

(特に誇張せず、思いをそのまま書いたので、つたない部分があることをご了承下さい)

2つの大きな事情があり、その2つが合わさったとき「よし、これだ!」と思いました。

1つ目の事情についてです。

私が学習塾「塾屋」を起業したのが2007年で、自律と共成ができる子を育てることを目指した独自のカリキュラムが豊田市のみならず遠く岡崎市からも通う方ほど注目される塾になりました。

入塾時の学力テストは行わず、入塾後の伸びを重視し、その子に足りていない能力を教科のみならず、例えば、質問をする練習や相談する練習などから行っています。

しかし、2010年代に入り、いわゆる「脱ゆとり」路線に変更していくなかで、入試制度、教科書、テストなどが難化していきました。難化したのなら、学習塾としては追い風になるはずが、入試問題やテスト、入試制度をみていくと、単に難しいテストにしているのではなく、問われている問題の質が変わっていたのです。

例えば、算数の計算を複雑にするのではなく、その計算式になるような文章問題を作ってもらう。日本語が書いてあって英作文をするのではなく、外国人留学生に豊田市の良さを50字以上で英作文する。

こういった、正解が1つ、これ!と決まっていない問題の割合が増えてきたのです。しかも、学校の授業内ではなく、入試など、将来を決めるような重要な場面で、です。

こういった傾向の問題を受験対策や模試で出てきて、生徒の解答を見ていると、学力に関わらず、全く書かない子がたくさんいました。ワークなどで問題を解いているところをみても、空欄で答えを写して終わり。定期テストでも配点が高かろうが白紙のままでした。

今までのような指導だけでは、こういうタイプの問題を解こうと思考して手を動かして解答する子に変わることはないのではないか・・・そう思って、模索していました。

2つ目は、2014年に生まれた娘の子育てです。

今まで塾では小学1年生からの指導経験はあったものの、幼児期の知育などの経験はありませんでした。もちろん、娘が生まれてからの子育てについては方針というか気を付けている部分はありましたが、4歳ころになってくると、具体的に「何を習わせるか」を考えるようになります。

これは初めての習い事あるあるかもしれませんが、まだ3・4歳で何が得意で、何が好きかを選ぶ素材もないなかで、その習い事を伸ばすというよりも、その習い事で何が鍛えられるのかを重視していました。

私たち夫婦が考えたのが、娘の健康に良いことと、脳(頭)に良いことでした。

娘の健康に良いことについては、体操やスイミングなどいくつか候補が浮かびましたが、脳(頭)に良い習い事としては、そろばんくらいしか思いつきませんでした。そろばん的な脳(頭)に良いとかちょっと違うんだよね・・・という話をしていたのを覚えています。

そんなとき、たまたま知育に良いものを探していた時にボードゲーム『ドブル』に出合いました。これなら4歳でもできそうだな・・・と思い、購入しました。

これら2つの事情が完全に合致したのが、その「ドブル」を家や塾で試した時でした。

今までの私の知育玩具のイメージだと、オセロなど、大人が絶対的に有利なものというイメージでした。しかし、ドブルを4歳の娘、塾内で小学生にやらせてみると、大人が勝てない・・・しかも、大人も子どもも全員が楽しんでやっていて「もう1回やろう」が止まらない!しかもしかも、(これはドブルを知らないと共感できませんが)終わったら「脳が」疲れるのが分かるんです。ということは、脳を使っている=鍛えられているわけです。

このドブルには必勝法もなければ、コツみたいな攻略法もありません。それぞれが目を動かし、発見して瞬時に声に出し手を動かして札を取っていく。自分のターンもないので、積極的に取っていくしか勝てない。

まだこのドブルの衝撃のときには、知育に良い!で止まっていました。それでも、大きな出合いでした

これを機に「ボードゲームってすごいんじゃないか?」と思い、いろいろなボードゲームを試すことに。

その「お試し」が確信に変わったのが、ボードゲーム「ラミーキューブ」でした。

すでにいくつかのボードゲームを経験していた娘が5歳のころ、私が熊本県に旅行に行った際、熊本市のボードゲームカフェ「HelloHellocafe」さんを訪問しました。そこで「5・6歳に良いボードゲームって何かありますか?」という、今考えると「めっちゃ良い車ありますか?」くらいザックリした質問でしたが、その質問にオーナーの方は即答で「ラミーキューブ」と答え、実際にプレイさせてもらいました。

その後、家でラミーキューブを繰り返していると、数字への慣れや知識が明らかに広がっていくのと、ラミーキューブ特有の「自分のターンで何個でもプレイできる」ことが、娘の積極性を引き出してくれました。今まではどちらかというと、おとなしく、引っ込み思案だった性格が、自分でドンドン動いていって、それが褒められたり勝利につながることで、ボードゲームを越えて日常でも積極的に動くようになりました。

そして、(これもラミーキューブを知らないと共感できませんが)ラミーキューブが、正解がなく、その場の盤面で最善の方法を自分で考えて行動していくボードゲームだったことで「解放が決まっていない問題をなんとかする場」につながることも確信できました。

「こういう要素がボードゲームごとにあるなら、ボードゲームを選んでプレイする環境をしっかり与えられたら、教科の学習では伸ばせなかった能力が、遊びながらドンドン伸びていくんじゃないか」

その発見から、学習塾内でボードゲームを取り入れた学習指導を行ってきました。ボードゲームをプレイすることによって変容していく生徒を何人も見ましたし、勉強に対する前向きさが現れたり、勉強時間は変わらないのにテスト結果がグンと伸びる生徒も出てくるようになったのです。

しかし、ここで1つ壁が存在しました。

それは、日ごろの勉強がうまくいっている子はボードゲームをする時間が取れるけど、日ごろの勉強がうまくいっていない子は、教科の授業や演習をする時間に追われてしまい、ボードゲームをする時間が取れていないという悪循環があったのです。

そうなると、日ごろの勉強がうまくいっている子はボードゲームをすることでさらに伸び、応用にも強くなっていく一方で、勉強で苦労している子はボードゲームもできず、原因になっている能力を伸ばす機会を作ってあげられなかったのです。

そのジレンマを解決するには、ボードゲーム専用の習い事、ボードゲーム教室を開校するしかないと決意したのです。そして、ボードゲームで身に付く能力=非認知能力は10歳ごろにピークを迎えること、勉強が大変になる前にボードゲームで勉強につながる能力を見つけてほしいことから、ボードゲーム教室の対象を幼児からにしました。

そうすることで、幼児からボードゲーム教室で非認知能力をドンドン伸ばしていき、勉強が必要になったときには小4以降、いつでも学習塾に移行(または掛け持ち)するという幼児期から高校生までの学びの一貫化ができるようになりました。

2022年4月のボードゲーム教室開校時、娘は8歳です。

すでに、50種類近くのボードゲームを経験し、「カタン」「宝石の煌めき」など大人が大会を開くようなボードゲームにも大人と混ざってプレイして、その大人に勝利するくらいになりました。

様々な要素がボードゲームごとにあります。交渉しないと勝てないもの、論理的に考えないといけないもの、誰かと協力するもの、全員で協力するものなど、1つ1つ異なります。ですが、どれも「楽しい」こと「年齢は関係ない」こと、さらには「正解がない」こと、「自ら起こした言動が勝敗に関わる」ことは共通しており、これらを全てカバーできるものがボードゲーム以外に見当たりません。

学習塾が提供できることに、ボードゲーム教室が与えてくれるものを加えた「学びの場」

これが、私が教育大学で教育学を学び、塾経営15年、子育て8年の答えです。

塾長 坪内 康将